この3月に入り、にわかにメディアにも扱われるようになってきたパンスターズ彗星(C/2011 L4 PanSTARRS)。3月10日~3月下旬までが見どきで、日没後の西の空に見え始めるとのこと。
詳しい位置については国立天文台のコンテンツが分かりやすいと思いますので、ひとまずそちらをご参考ください。
http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2013/panstarrs.html
一時はマイナス等級の大彗星になることも期待されていましたが、残念ながらそこまで明るくはならないようで、普段天文に興味のない人が何の準備もなしに簡単に見つけられる彗星かというと、そうはいかない感じです。
光度だけで言えば、3月中旬は2等級台~3等級台、その後も3月一杯は4等級程度と予想されていますので、彗星が星に比べぼんやりとした広がりだということを差し引いても、肉眼でも十分見つけられる明るさの筈です。
しかし・・・問題なのがその時の高度。日没後30分(東京だと18:15頃)、ようやく明るい星が見える程度に西の空が暗くなったときでも、水平線(地平線)から僅か10度程度の高さにしかならないのです。
これは、僕のようなビギナーレベルの天文ファンからすると少々厳しい条件です。普段天文に興味の無い方ならなおさらでしょう。
というわけで、以下「それでも今回の彗星を見たい!」という方のために、観測に際してのアドバイスをいくつかまとめておきますので、ご参考下さい。
双眼鏡を用意しましょう
光度2~3等級というと北斗七星の星々と同じくらいの明るさですが、彗星はぼんやりとした広がりなので、同じ等級の星よりも暗く見えます。それが日没30分程度のまだ明るい西の空で、肉眼で見えるかといえば・・・空の透明度が最高の条件でもないかぎり、難しいものと思われます。出来れば口径40mm×8倍クラスの天体観測向けの双眼鏡が欲しいところですが、ホームセンターでよく売っている口径20mm×8倍クラスのアウトドア用の双眼鏡でも無いよりはずっとましです。なお、100均のオペラグラスは全く役に立ちませんので念のため。1000円ショップなどに良くある口径が大きいだけの粗悪品にもご注意を。
とにかく西が開けた場所、かつ、少しでも高い場所へ
観測に際しては、とにかく西が完全に開けた場所で、なおかつ少しでも高い場所を探してください。高度10度というと、こぶしを握り、縦にして、腕をまっすぐ伸ばして、小指を水平線(地平線)に合わせたときの親指の高さくらいしかありません。もちろん、低空はスモッグや薄雲でかすむこともよくありますので、水平線近くまでスッキリ晴れている状況でないと観測は厳しいです。例えば僕が住んでいる千葉県北西部~東京都心付近だと、夕方に富士山頂が霞むことなく見える状況であれば期待大でしょうが、富士山がスモッグに隠れて見えない状況ならかなり厳しいものと思われます。
絶対に観たい人は観測会へ
今回の彗星に限った話ではないですが、「どうしても見たい!」という場合に一番良いのは、天文台や、天文クラブ主催の観測会に参加することです。天体観測は機材の性能がものを言う趣味ですし、観測会を開く位ですから(天候はともかくとして)その場所が観測適地であることに違いはありません。大都市圏でも高層ビルの展望ルームで観測会が開かれるといった話がチラホラありますから、まずはご近所で何か催されないか探してみましょう。
期待しすぎてはいけません
おそらく今回の彗星は、1996年の百武彗星、1997年のヘールボップ彗星のような、壮大な彗星にはなりません。この記事を書いている3/8時点での予想では、せいぜい1986年のハレー彗星程度の見応えと思われますので、誰かと観に行くときはあまり期待しすぎない(させすぎない)ことが肝心です。少なくとも、条件の良い場所まで観に行くために会社や学校を休むのは、よほど今回の彗星に思い入れがある場合を除いてちょっと考え物かと思います。なお、今回の彗星は、日没後のまだ空が明るい時間帯にしか見られませんので、光の害が少ないところまで出かけても、あまり見栄えは変わらないものと思います。
以上、「なんだ、ニュースで知って期待していたのにがっかり」と思われる方もいるかもしれませんが、天文現象の大半は我々ビギナーには観測すら難しいものですので、あまり肩を落とされませぬよう。
今年の12月には、おそらく10年~20年に一度、下手をすると数世紀に一度の歴史的大彗星となるだろうISON(アイソン)彗星(C/2012 S1 ISON)がやってきます。
こちらは(今のところ)正真正銘2013年大本命の天体ショーですので、期待もお金も有給休暇も、来るISON彗星のために取っておくのが吉かと思います。
2013/11/18追記:結局残念ながら、ISON彗星も割と平凡な彗星に終わりそうです。彗星にしても、流星群にしても、天文現象の見える見える詐欺はやめにしてもらいたいと常日頃から思っているのですが、自分自身大げさな情報を流すことになってしまい、ちょっとお恥ずかしいです。
2013/3/12追記
本日、千葉市の自宅(団地の4階)にて、50mm×7倍の双眼鏡を使い、日没後25分の時点で観測に成功。雲に隠れる10分間ほど観測できました。
コマは2等はありそうで、集光も強いので、より小口径の双眼鏡でも見えると思います。尾もしっかりとしており、日没後30分で0.1度は確実に分かりました。これだけ明るければ、日没直後からでも、コマの存在は分かるかもしれません。
やはり裸眼では、よほどの好条件でないと難しそうです。少なくとも、双眼鏡で見た後でないと、かなり視力の良い人でも厳しいでしょう。