「SEO」の冠がついた会社の役員を辞してから早3年。その会社自体が趣旨替えをしてからも既に2年半経つわけですが、その頃のイメージが強かったのか、SEO関係のお仕事の依頼が未だによくやってきます。
まあ、Webである以上、検索ユーザーのことを考えてページ構成やコピーを練るのは当然としても、それ以上の”検索エンジン攻略”を要求されるお仕事については、今では全てお断りしています。自著に書いているようなごく基本的なテキストチューニングさえ、お仕事ではやらなくなりました。
SEOは夢のある技術でしたが、いい歳をして検索エンジンの虚を突く”ズル”を売りものにしたくないのと、何よりサイトの耐用期間を縮める危険もある作業をプロとして行うことに、うしろめたさを感じるようになったからです。
参考までに、約1年前に開設して放置しておいた、とある実験サイトのアクセスログを掲載しておこうと思います。あからさまなスパムこそしていませんが、たいしたコンテンツは用意せず、単独のチューニングだけでやれることをやってみたサイトです。数字はセッション数。ページビューは大体この3倍くらい。
最初の数ヶ月はGoogle、次の数ヶ月はYahoo!にうまく拾われたものの、ちょっとやりすぎたせいか、すぐに平凡なサイトの値に落ち着いてしまいました。完全にスパム落ちしていないだけまだマシな感じですね。
ここまで極端な結果になるかどうかは別として、行きすぎた”検索エンジン最適化”は、検索エンジン側から見れば迷惑な”攻略”に過ぎず、いずれは対策が練られて実効性がなくなります。それを持続させるには、手間をかけて新たな”攻略”を練り続けなければなりません。
もちろん、”攻略”には、スパム落ちの危険もつきまといます。ソーシャルブックマークスパム、更新ping不正大量送信スパム、私設検索ディレクトリ一斉申請スパム、リンクファーム、クローキング、自動増殖サイトといった、過去の”特効薬”、あるいはその改良版を売り物にしているSEO業者も未だ沢山いますし、そういった作業をサポートするツールも多数販売されていますが、その手の”攻略”は効果が出るときは信じられないほど出るものの、スパム判定をくらう確率も跳ね上がります。やっていることがバレたときの風評なども考えると、個人サイトならともかく、企業サイトでやるのはリスクが高すぎます。
変に楽をしようとして業者に高いお金を払って”ズル”を頼むくらいなら、「コンテンツ・イズ・キング」の原則どおりコンテンツの充実にお金をかけるべき、あるいはリスティング広告などもっと確実なプロモーション方法を選ぶべきというのが、僕の今のところの結論というわけです。実際、まともなSEO業者は、今ではSEOよりその辺に力を入れています。
まあ、こんなことはもう何年も前から言われているわけで、とうの昔に本職でなくなった僕が偉そうに言うほどのことでもないのですけど、年度末を目前にまたこの手の問い合わせがチラホラ来ているので、”やりたくない理由”として、クライアントに納得してもらえそうなグラフを紹介した次第です。