黄昏 松下健次郎
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大学時代、写真サークルに所属していた時の、1993年か1994年の大学祭で出展した組写真のうちの一枚です。
表現者指向の強い部員ばかりのサークル内で、ただの暗室作業好きだった僕なりの精一杯の自己表現を、あくまで暗室技術だけで果たしてやろうと試行錯誤した結果のコラージュ写真。まあ、銀塩写真時代のコラージュの大変さを思えば、素人にしては良く頑張ったのではないかなと。
細かい撮影データは失ってしまいましたが、手順としては以下の通り。
1.冷蔵庫で麻痺させた蟻を標準レンズ+クローズアップレンズを使い近接撮影。
2.それを無光沢紙にプリントしたものをデザインカッターで切り抜き、やはり無光沢紙にプリントした背景写真と糊付け合成。
3.最後に超高感度フィルム(ネオパン1600スーパープレスト)で複写して粗粒子現像。中間調の部分を点描画のように荒らしてやることで、貼り合わせが分からないように仕上げる。
最終的な仕上げを粗粒子にすることで、結果的には良い感じの雰囲気になった訳ですが、当初はもっと微粒子状態での合成を意図しており、蟻と背景それぞれの素材はミニコピーフィルムHRIIを用いた ISO感度6相当の極超微粒子撮影をしています。
この一枚を作るのに、暗室作業だけで2日ほど、1万円以上の材料費がかかったように記憶していますが、今ならデジカメとPhotoshopで30分もかからず、遙かにクオリティの高いコラージュが作れることでしょう。
1万円のコンパクトデジカメですら当時の極超微粒子撮影の解像度を凌駕してしまっている今日。先に挙げた2種類の銀塩フィルムもすでに生産終了となって寂しい限りですが、デジタル化の波が押し寄せる前に学生時代を過ごせたことは、手段こそ目的だった僕としては、本当に幸せだったと思います。
あー暗室やりたい。